ハイブリッド給湯器とは?取付け事例やメリット・デメリットを紹介
給湯器の種類の1つに、「ハイブリッド給湯器」というものがあります。
「名前だけ聞いたことはあるけど、普通の給湯器との違いは知らない」という人が多いのではないでしょうか。
ハイブリッド給湯器は、ガスと電気のそれぞれの長所を活かしたエネルギーベストミックスの高効率給湯器のことです。
ハイブリッド給湯器ならではの仕組み(後述します)のおかげで、無駄なく・素早くお湯を沸かすことが可能になります。
そして、災害に強いという特徴も併せ持っています。
今回の記事では、「ハイブリッド給湯器について詳しく知りたい!」という人のために、当社『東急でんき&ガス サポート』で実際にハイブリッド給湯器を取付けた事例を紹介しつつ、ハイブリッド給湯器のメリット・デメリットについて、詳しく解説していきます。
ハイブリッド給湯器とは?
先にも述べましたが、ハイブリッド給湯器とは、ガスと電気のそれぞれの長所を活かしたエネルギーベストミックスの高効率給湯器のことです。
効率よくお湯を沸かすことができる(=給湯光熱費が安い)電気のメリットと、短時間でお湯を沸かすことができるガスのメリットを、兼ね備えています。
また、災害に強いというメリットも大きな特徴として挙げられます。
ハイブリッド給湯器は、下記3つのユニットを組み合わせた構造です。
- 電気式ヒートポンプ
- 高効率ガス給湯器
- 貯湯タンク
ハイブリッド給湯器の仕組みについて
「ハイブリッド給湯器でお湯を沸かす仕組みはどうなっているの?」と聞かれることが多いですが、まず基本的には「ヒートポンプ」の力でお湯を沸かします。
そしてタンクの中に、お湯を貯めておきます。
タンクの中のお湯がなくなった場合(湯切れ)には、「ガス」の力で素早くお湯を沸かします。
つまり、「湯切れが起こってしまった場合に、再度お湯を沸かすのに時間がかかる」という電気の力のデメリットが、ガスの力によって補われているということです。
ハイブリッド給湯器を導入すると、状況に応じて無駄なくお湯を沸かすことができ、家計・環境の両方への配慮が実現可能になります。
ハイブリッド給湯器のメリットについては、後ほど詳しく解説します。
ハイブリッド給湯器の2つの交換事例
以下では、当社『東急でんき&ガス サポート』が実際にハイブリッド給湯器を取付けた事例を2つ紹介します。
ハイブリッド給湯器を選んだ理由や、取付け費用などを知りたい人は参考にしてみてください。
【1】14年使用したスリムタイプの給湯器を撤去し、ハイブリッド給湯器を取付け 神奈川県横浜市
- 取付け時間:6時間
- 総額:80~100万円(補助金適用前の価格)
神奈川県横浜市の戸建住宅にお住まいのお客さまより、ハイブリッド給湯器の取付けのご依頼をいただきました。
既存の給湯器は、『リンナイ』のスリムタイプでした。
スリムタイプはその名の通り、狭い場所に設置するための機種で、通常タイプよりも費用が高めという特徴があります。
既存の給湯器の使用年数は14年ほどで、今後予兆なく壊れる可能性が高いため、交換を提案しました。
今回は、「①ハイブリッド給湯器を取付ける場合」と「②後継機種を取付ける場合」の、2種類の見積りをお出ししました。
ハイブリッド給湯器が選択肢に入ったのは、既存の給湯器が給湯器のなかでも比較的高額なスリムタイプであり、ハイブリッド給湯器との差額が少なかったためです。
そして、ハイブリッド給湯器の費用対効果を検討するため、実際のガス使用量の履歴を拝見して計算を行いました。
計算の結果、お客さまはカタログなどに掲載されている“理論値以上”の使用頻度で、給湯器を使用していることが分かり、おトクになる金額が大きい(少なくともカタログ値は担保できそう)と判断しました。
最大限おトクになる金額と、最低限おトクになる金額の両方を算出してみて、検討し、ハイブリッド給湯器を導入することを決められました。
なお今回の工事の状況が、ハイブリッド給湯器の取付けに対する補助金の適用条件に当てはまっており、経済産業省から15万円の補助金が出ることも、ハイブリッド給湯器を選ぶ決め手になりました。
<詳しくはコチラ>
⇒ 14年使用したスリムタイプの給湯器を撤去しハイブリッド給湯器を取付け 神奈川県横浜市
【2】湯切れが起きるとお湯ができるまで時間がかかる給湯器(エコキュート)をハイブリッド給湯器に交換 東京都世田谷区
- 取付け時間:8時間
- 総額:80~100万円(補助金適用前の価格)
東京都世田谷区の戸建住宅に住むお客さまより、給湯器の交換の依頼をいただきました。
既存の給湯器(エコキュート)については、
- 湯切れが起きた際に、お湯ができるまで時間がかかる
- 給湯器が大きいせいで排水桝を開けられない(お客さまは排水桝の掃除をしたかった)
という、お悩みがありました。
既存の給湯器は『日立』のもので、約12年使用していました。
新しい給湯器は、『リンナイ』のハイブリッドふろ給湯器(追焚き機能付)です。
- 湯切れの心配がない
- ランニングコストを下げられる
- CO2排出量を削減できる
- 国から補助金が出る
上記の理由から、ハイブリッド給湯器を提案しました。
ランニングコストについては、お客さまの家庭(3人家族)においては、「年間4万円ほど下げられる」と試算しました。
また先ほどの事例と同様、こちらのお客さまの場合も、補助金の適用条件に当てはまっており、経済産業省から15万円の補助金が出ました。
工事が決まるまでの間には、普通の給湯器とのランニングコストの比較や、「既存の給湯器のような湯切れがなぜ起こらないのか?」というご質問に対するご説明を行ないました。
なお、「ハイブリッド給湯器とは?」の項目で述べたように、ハイブリッド給湯器には3つのユニットがあります。
それぞれの機器の設置場所は、現場の状況に応じて分散して設置が可能です。
そのため、今回は排水桝にかぶらないよう調整して設置することができました。
また、それぞれの機器をつなぐ配管を無駄なく綺麗に配置しました。
ハイブリッド給湯器への交換工事完了後、お客さまからは「場所がスッキリしたし、排水桝も開けられるようになってよかったです」とのお声をいただきました。
またハイブリッド給湯器の使い勝手については、「湯切れの心配がないので安心です」「(従来と比べて)違和感はないです」とのことでした。
<詳しくはコチラ>
⇒ 湯切れが起きるとお湯ができるまで時間がかかる給湯器(エコキュート)を「ハイブリッド給湯器」に交換 東京都世田谷区
ハイブリッド給湯器の5つのメリット
- 給湯光熱費(ランニングコスト)が安い
- お湯が切れる心配がない
- 災害に強い
- 一定のスペース確保で設置が可能
- 環境にやさしい
以下では、ハイブリッド給湯器の5つのメリットを解説します。
【1】給湯光熱費(ランニングコスト)が安い
ハイブリッド給湯器を採用すると、普通のガス給湯器や『エコジョーズ(省エネ給湯器)』よりも、給湯光熱費(ランニングコスト)を安くすることができます。
<年間給湯光熱費>
ノーリツの人気機種『ユコアHYBRID』の場合
- 従来型給湯器(LPガス):約152,000円
- エコジョーズ :約126,100円
- ハイブリッド給湯器 :約53,000円
※試算条件 平成28年省エネルギー基準に準拠した「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)Ver3.5.0」(6地域)により算出。年間給湯・保温負荷18.3GJ。従来型給湯器:2006年度基準エネルギー消費効率81.7%、エコジョーズ:モード熱効率92.5%。LPG料金5.9円/MJ※出典元:石油情報センター(令和4年度月次平均価格(50㎡)データの単純計算より)。電気料金31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会『電力料金の目安単価』より)。水道料金265円/㎡((一社)日本バルブ工業会) |
なお、「オール電化住宅」で『エコキュート(電気給湯器)』を使用する場合と比べると、ハイブリッド給湯器のほうが年間10,000円ほど給湯光熱費が上がってしまいます(標準的な4人家族の場合)。
しかし、オール電化住宅にすると以下のようなデメリットもあります。
- コンロをIHにする必要がある
- ガス浴室暖房乾燥機が使えない
- 災害時に電気の供給が止まるとお湯が沸かせなくなる
これらのデメリットを踏まえたうえで、ランニングコストを一番安くしたいなら、「オール電化」×『エコキュート』が1番安いです。
ただ、
- キッチンはガスコンロがいい
- ガス浴室暖房乾燥機を使いたい
- 急な災害に備えたい
といった理由でガスも併用するなら、ハイブリッド給湯器が1番ランニングコストを抑えられるでしょう。
【2】お湯が切れる心配がない
ハイブリッド給湯器でお湯を沸かす場合、使用している途中でお湯が切れる心配がありません。
電気でお湯を沸かす『エコキュート』の場合、タンクに貯めていたお湯がなくなると、新たにお湯を沸かす必要があり、それに時間がかかります。
しかしハイブリッド給湯器であれば、先ほど「ハイブリッド給湯器の仕組みについて」の項目で説明したように、タンクのお湯が切れてもガスの力で素早くお湯を沸かすため、便利で安心です。
急にお湯の使用量が増える場合(親戚・友人が泊まりに来るなど)でも、対応することができます。
【3】災害に強い
ハイブリッド給湯器は、他の給湯器に比べ、災害に強いというメリットもあります。
ハイブリッド給湯器は、災害によってガスか電気、どちらかの供給が止まった場合でも、片方のシステムを動かしてお湯を沸かすことができます。
また、断水時でも、タンク内の残り湯を生活用水(特に重宝するのがトイレの水)として、使用することができます。
残り湯を使用する際に電気やガスは使用しないため、停電時やガス遮断時でも残り湯をタンクから出すことができます。
過去の震災では、電気・ガスの復旧に数日〜数ヶ月を要しています。
電気・ガスの復旧に時間がかかる場合において、ハイブリッド給湯器のレジリエンス性(災害からの回復力)の高さは非常に頼もしいのです。
災害名 | 被災地域 | 電気 | ガス |
---|---|---|---|
2018年 台風24号 | 中部 | △ 5日間で復旧 | ◎ 被害なし |
2018年 北海道胆振東部地震 最大震度7 | 北海道 | △ 北海道全域で停電 | ◎ 被害なし |
2018年 台風21号 | 関西 | △ 3週間で完全復旧 | ◎ 被害なし |
2018年 西日本豪雨 | 中国 | △ 8万個停電 1週間で復旧 | 〇 1000戸停止 5日で復旧 |
2018年 大阪北部地震 最大震度6弱 | 関西 | 〇 その日のうちに復旧 | △ 1週間で復旧 |
2016年 熊本地震 最大震度7 | 九州 | 〇 5日間で復旧 | △ 2週間で復旧 |
2011年 東日本大震災 最大震度7 | 東北 関東 | △ 3ヶ月で復旧 福島原発除く | 〇 プロパン1ヶ月 都市ガス1ヶ月半 |
【4】一定のスペース確保で設置が可能
ヒートポンプでお湯を沸かす『エコキュート』は、電気代が安い時間帯に沸かしたお湯を、貯水タンクに貯めておき、必要なときにお湯を供給するシステムです。
一方、お湯を貯めるための容量の大きいタンクが必要なところが難点でした。
ハイブリッド給湯器は、ガスと電気を効果的に使い分けながら給湯するシステムです。
そのため『エコキュート』ほど大きな容量のタンクが必要なく、コンパクトに設置することができます。
設置は戸建住宅に限られますが、具体的には、「約50cmの奥行」があれば、大抵の場所にハイブリッド給湯器を設置することが可能です。
ハイブリッド給湯器は3つのユニットを置く必要がありますが、レイアウトはかなり自由です。
窓下のような低い位置に置いたり、既存の給湯器の位置に合わせたり、先の事例で紹介したように排水桝を避けて置いたり、多彩な置き方ができます。
【5】環境にやさしい
ハイブリッド給湯器でお湯を沸かす際に排出されるCO2の量は、従来のガス給湯器で出るCO2の量の約半分です。
上記のことから、ハイブリッド給湯器は環境にやさしい給湯器だと、見なすことができるでしょう。
環境貢献の高い給湯器であるため、事例紹介の中でも解説したように、経済産業省からの補助金(最大で15万円)が出るのです。
ハイブリッド給湯器の4つのデメリット
- 導入費用(イニシャルコスト)が高い
- 地域の気候・家族構成によっては節約になりにくい
- 気温の低い地域では「寒さ対策」が必要
- 設置場所の確保が必要
以下では、ハイブリッド給湯器の4つのデメリットを解説します。
【1】導入費用(イニシャルコスト)が高い
メリットの項目で述べたように、給湯光熱費(ランニングコスト)が安いハイブリッド給湯器ですが、導入費用(イニシャルコスト)が他の給湯器よりも高いことがデメリットです。
<各給湯器の導入費用(本体・工事費含む)>
- ハイブリッド給湯器:約75~100万円
- エコキュート :約50~70万円
- エコジョーズ :約30~40万円
- ガス給湯器 :約20~30万円
上記のように、ハイブリッド給湯器は他の給湯器よりも導入費用がかかるため、「使用年数が短い」または「使用頻度が低い」と、節約にならないことがあります。
導入費用を回収するまでに、十数年かかることがございます。
なお、ハイブリッド給湯器の導入に際して、国または自治体の補助金制度があります。
2024年10月現在、適用条件に当てはまっていれば、最大15万円の補助金が国から出ます。
先々減額される可能性や、条件の見直しがされる可能性があるので、現状の補助金を頼りにする場合は、早めに工事を行うとよいでしょう。
<補助金について詳しくはコチラ>
⇒ 経済産業省 資源エネルギー庁 対象機器の詳細【ハイブリッド給湯機】
【2】地域の気候・家族構成によっては節約になりにくい
ハイブリッド給湯器を採用して大幅に給湯光熱費を節約できるのは、同居家族の人数が多い場合や、お湯の使用量が多い家庭などです。
タンクに貯めた量で毎日の給湯を十分にまかなえる家庭では、ガス給湯の機会がなく、ハイブリッドならではの強みが活かされません。
ハイブリッド給湯器を導入するかどうかは、今の状況でどの程度節約ができるのか、きちんとシミュレーションをしたうえで検討しましょう。
【3】気温の低い地域では「寒さ対策」が必要
ハイブリッド給湯器の「冷媒ヒートポンプ式給湯器」の部分は寒さに弱く、寒冷地域ではお湯を沸かす効率が悪くなります。
マイナス10℃以下など極端に寒い環境では、給湯器が作動しなくなることもあるでしょう。
寒冷地域でハイブリッド給湯器を導入する場合、寒冷地仕様のハイブリッド給湯器もありますので、必要に応じて選んでください。
【4】設置場所の確保が必要
先述したように、『エコキュート』と比較すれば、ハイブリッド給湯器はコンパクトではありますが、通常の給湯器と比べればスペースを取ります。
戸建住宅では、敷地内に設置可能なスペースがあるかどうか、確認が必要です。
先に述べたように、「約50cmの奥行」があるかどうかがポイントです。
こんな家庭にハイブリッド給湯器はオススメ!
ハイブリッド給湯器は、以下のような家庭に特にオススメです。
- 家族の人数が多く、お湯の使用頻度が高い家庭
- 災害時に、より安心安全な暮らしをしたい家庭
要するに、お湯をたくさん使う家庭や、災害時でもお湯が必要な家庭には、ハイブリッド給湯器がとても向いています。
先述したように、ハイブリッド給湯器は導入費用(イニシャルコスト)が高額です。
しかし、給湯光熱費(ランニングコスト)が安いため、お湯の使用量が多いほど給湯光熱費の削減効果は高くなります。
そのため、「普段からお湯をたくさん使うかどうか?」「災害時の備え」が、ハイブリッド給湯器の導入の決め手になります。
加えて、お住まいの地域の気候などを考慮し、ハイブリッド給湯器を検討してみてください。
また先述のように、災害に強いという特徴があるため、災害発生時により安心で安全な暮らしをすることができます。
- ガスの供給が止まっても、電気だけでお湯を沸かすことができる
- 電気の供給が止まっても、ガスだけでお湯を沸かすことができる
- 水道が止まっても、タンク内の残り湯を生活用水として使うことができる
ハイブリッド給湯器がおトクかどうか、どう判断する?
「現在、通常の給湯器を使用していて、それと比べてハイブリッド給湯器がどの程度おトクになるのか知りたい」という人は多いと思います。
あくまで参考値ではありますが、メーカーのシミュレーションサイトを利用してみてください。
給湯光熱費の削減額が、簡単に分かります。
なお、当社『東急でんき&ガス サポート』は、各メーカーとの連携がしっかり取れているため、できる限り詳しいシミュレーションを行うことができます。
まとめ
以上、ハイブリッド給湯器とは何なのか、事例と一緒にメリット・デメリットを詳しく解説しました。
ハイブリッド給湯器は「電気の力」と「ガスの力」、それぞれの強みを兼ね備えた新しい給湯器です。
導入費用(イニシャルコスト)が高額で、給湯光熱費(ランニングコスト)が安いという特徴があり、導入費用の高さを補うために2024年10月現在、国・自治体から補助金が出ています。
「すべての家庭にとって給湯光熱費のメリットが大きい」という訳ではなく、給湯光熱費の削減効果は、お湯をたくさん使う家庭において大きく期待できます。
自分の家庭でどのくらい給湯光熱費がおトクになるのか、しっかりとシミュレーションを行ったうえで導入を検討するとよいでしょう。
また、災害に強いというメリットも大きな特徴として挙げられます。
災害時に、より安心安全な暮らしをしたい方にも導入をオススメします。